このページの監修医師
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「がん治療後に、リンパ浮腫になる可能性がある」と聞き、自分は大丈夫か不安になってはいませんか。
リンパ浮腫とは、リンパ液の流れが悪くなって余分な水分やタンパク質が体にたまり、むくみが続く状態のことをいいます。がん治療の影響で発症するケースが多く、放置すると徐々に悪化する可能性もある病気です。
本記事では、リンパ浮腫が起こるメカニズムや症状・治療法を紹介します。必要以上に不安を感じずに済むよう、詳しく知るところから始めましょう。
目次
リンパ浮腫とは、リンパ管やリンパ節の機能が障害されることでタンパク質を多く含む水分が皮下組織にたまり、腕や脚が慢性的にむくむ病気です。一般的なむくみとは異なり、一度発症すると完治は困難なので、早期からの適切なケアが重要とされています。
まずはリンパ浮腫が起こるメカニズムと、通常のむくみとの違いをチェックしましょう。
リンパ浮腫は、何らかの原因でリンパ液の流れが低下して起こる病気です。
リンパ管は、体内の余分な水分や老廃物を回収し、静脈へ戻す役割を担っています。リンパ管の途中には、豆のような形のリンパ節が300~600個点在し、異物や老廃物を排除しています。
リンパ管やリンパ節がダメージを受けてリンパ液の流れが滞り、回収されるはずの水分やタンパク質が皮下にたまって発症したむくみが、リンパ浮腫です。
リンパ管やリンパ節がダメージを受けてリンパ液の流れが滞り、回収されるはずの水分やタンパク質が皮下にたまって発症したむくみが、リンパ浮腫です。

出典:診療ガイドライン|日本癌治療学会 がん診療ガイドライン
むくみは重力の影響を受けやすく、リンパ浮腫の症状は朝よりも夕方に悪化する傾向があります。
健康な方でも経験することのある一般的なむくみと、リンパ浮腫の違いは、以下のとおりです。
| 一般的なむくみ | リンパ浮腫 | |
|---|---|---|
| 原因 | ・水分・塩分のとりすぎ ・月経周期の影響 ・長時間の立ち仕事 | リンパ管系の機能低下 |
| 症状が表れる場所 | ・全身 ・左右対称 | リンパ液の流れが悪い部位のみ |
| たまっている液体 | 水分 | 水分+タンパク質 |
| 期間 | 1日~数日のことが多い | 慢性的 |
| 進行 | 進行しない | 徐々に悪化する |
ただし、全身のむくみには、心臓や腎臓の機能低下が原因の場合もあります。出現場所がどこでも、長期間むくみが続くようであれば受診をおすすめします。
リンパ浮腫の代表的な原因は、次のとおりです。
先天的要因で起こるケースは「原発性(一次性)」、後天的な原因による場合は「続発性(二次性)」と分けられます。原因によって発症時期や進行の特徴が異なります。
発症原因についての理解を深め、自分のリスクを知ることにつなげましょう。
生まれつきリンパ管やリンパ節の数が少なかったり、構造が未発達であったりする先天的な異常は、リンパ浮腫発症の原因です。
発症した患者さんの9割で脚に症状が出ており、男性に比べ、女性のほうがやや多い(58.7%)と報告されています。男性は乳児期に発症する方が多く、女性は思春期や妊娠中など、体に負担がかかる時期に症状が表れやすいことが特徴です。
原発性リンパ浮腫は、ターナー症候群やHennekam症候群といった、染色体・遺伝子異常で起こることもあります。

日本で最も多いリンパ浮腫の発症原因は、以下のようながん治療の影響です。
| 処置の名前 | リンパ浮腫を発症するメカニズム |
|---|---|
| リンパ節郭清 | 転移を防ぐためにリンパ節を切除した |
| 手術 | 病巣を摘出する際にリンパ管が傷ついた |
| 放射線治療 | 放射線を当てた部位の周りのリンパ管が傷ついた |
| センチネルリンパ節生検 | 乳がんの転移を調べる検査でリンパ節が傷ついた |
| 抗がん剤の投与 | タキサン系抗がん剤によるむくみから移行した |
以下のがんは、リンパ浮腫につながりやすいといえます。
腕のリンパ浮腫の多くは乳がん経験者に起こり、脚の場合は約9割が子宮がん・卵巣がん治療後の発症といわれ、患者さんの大半が女性です。
感染症や事故によってリンパ管が傷つくことも、リンパ浮腫の原因です。
日本では1978年以降確認されていませんが、世界的には、「フィラリア症」という寄生虫による感染症でリンパ浮腫を発症する患者さんが多くいます。
骨折や手術、深い外傷などでリンパ管が損傷すると、回復後もリンパ液の循環が十分に戻らない場合があります。
ケガのあと、炎症反応により一時的に患部が腫れぼったくなることはよくある症状です。しかし、外傷後にむくみが長引くときは、リンパ浮腫が疑われる場合もあるでしょう。
リンパ浮腫は、軽いむくみだと軽視して適切な対応をしないまま放置すると、徐々に症状が悪化することがあります。進行にともない、むくみの程度だけでなく、皮膚や皮下組織の状態にも変化が表れます。
症状の変化の理解をとおして、「リンパ浮腫は早期発見・早期治療」が大切だといわれている理由をしっかりと確認しましょう。
初期のリンパ浮腫では、見た目の変化がほとんどなく、「なんとなく張る」「重だるい」といった違和感のみにとどまるケースが多くあります。むくんだとしても少し休憩すれば軽快し、感触はやわらかいといえます。
がん治療をした部位の近くの腕や脚に、以下のような症状がある場合は、一度受診することがおすすめです。
表面からはわかりにくくても、リンパ液の流れが低下している可能性はあるため、早めの対策が重要です。
リンパ浮腫が進行すると、しだいにむくみが慢性化し、横になって休んでも改善しにくくなります。皮膚を指で押すと、はっきりとへこみが残ることが多いでしょう。
中等度まで進行したリンパ浮腫により、生活のなかにも以下のような支障が出ることがあります。
リンパ浮腫の有無に応じて、腕や脚の太さや皮膚の状態の左右差がはっきりとわかるようになるケースも少なくありません。日常動作に時間がかかったり、外見の変化が表れたりすることで外出や仕事を負担に感じる方も多くいます。
重度のリンパ浮腫の特徴的な症状は、皮膚や皮下組織が硬くなり、むくみを押してもへこまなくなることです。皮下脂肪が増えて腕や脚が太くなり、「関節が曲げにくい」「重くて動けない」と感じる方もいます。
乾燥した皮膚はひび割れて傷を作りやすく、リンパ液が漏れたり、傷口から細菌が入って感染したりといったリスクが高まります。
何より、見た目の大きな変化や「もっと悪化するかもしれない」という不安は精神的な負担となり、生活の質の低下にもつながりかねません。
2026年2月時点では、変化した皮膚や皮下組織を元のやわらかい状態に戻すことは困難とされています。入院したうえでの集中的な患部圧迫や、手術によって、腕や脚の太さの改善を目指す方法がとられます。
リンパ浮腫の方は、以下のような合併症にも注意が必要です。
| 蜂窩織炎 | 皮下組織が細菌に感染して炎症が起こる。赤み・熱感・腫れなどをともなう |
|---|---|
| リンパ小疱 | 膨らんだリンパ管が皮膚の表面に水ぶくれのように表れる。陰部リンパ浮腫で起こりやすい |
| 象皮症 | むくんだ皮膚が硬く厚くなる。重度のリンパ浮腫で起こる |
| リンパ漏 | 皮膚の表面からリンパ液が漏れ続ける。象皮症・リンパ小疱に合併しやすい |
特に、蜂窩織炎はリンパ浮腫の発症前から注意しなくてはなりません。
リンパ液の流れが滞っている部位は免疫機能が低下しやすいうえ、皮膚が乾燥し、細菌が比較的容易に侵入できる状態です。蜂窩織炎を繰り返すとリンパ管の働きがさらに障害され、リンパ浮腫の発症・悪化につながります。
リンパ浮腫の治療法は、「保存的治療」と「手術」に大きく分けられます。基本的にはまず保存的治療に取り組み、症状の程度や経過、患者さんの状態に応じて手術が選択されることが多いでしょう。
2026年2月時点の医療では、リンパ浮腫の完治は難しく、治療では悪化させず、症状を軽くすることを目指します。症状の進行を抑え、日常生活への支障や合併症を防ぐためには、早期発見・治療が大切です。
リンパ浮腫治療の基本となる保存的治療は、多くの方がはじめに取り組む方法です。主に、以下のような方法を組み合わせて行います。
| 圧迫療法 | 医療用のスリーブやストッキングで患部を圧迫する。リンパ液の貯留を防ぐ |
|---|---|
| スキンケア | 患部を清潔に保って保湿することで細菌感染を防ぐ。発症前から予防的に行える |
| 運動療法 | 弾性着衣で圧迫しながら運動してリンパ液の貯留を防ぐ |
| 用手的リンパドレナージ | 貯留したリンパ液が健康なリンパ節に流れるようマッサージする。教育を受けた専門家が行う |
保存的治療のなかでも圧迫療法は軽度の段階から導入され、重度になっても続ける必要がある大切な方法です。
リンパ浮腫の治療において、リンパ管の状態や症状によっては手術が検討されることもあります。
手術では、障害されたリンパ管を静脈につないでリンパ液の流れを改善することを目指したり、過剰に増えた皮下組織を切除して見た目を良くしたりします。
手術の実施には、保存的治療にしっかりと取り組み、リンパ浮腫のある腕・脚を良い状態に維持することが欠かせません。
腕のリンパ浮腫は、LVAという手術によって圧迫療法が不要となるケースもありますが、多くの場合、術後も保存的治療の継続が必要です。

リンパ浮腫患者さんの圧迫療法に関するお悩みから生まれた弾性着衣が、以下の特徴を持つ「リンパスリム」シリーズです。
リンパ浮腫に圧迫療法は不可欠であり、毎日はき続けることで治療効果が期待できます。しかし、自身に合った製品が見つからず、治療を中断してしまう患者さんが大勢います。

リンパスリムは、しっかりと圧迫しながらも治療を継続しやすいように、はきやすさ・見た目の美しさにもこだわりました。
リンパ浮腫の圧迫療法を続けるなかで、弾性着衣に関する次のようなお悩みがある場合は、リンパスリムがお役に立てる可能性があります。
リンパスリムは、医師の指示書があれば公的保険の療養費申請が可能です。
リンパ浮腫は生涯付き合わなければならない病気だからこそ、治療は続けやすく無理しなくて良いことが大切です。「圧迫療法がつらい」と思ったことがある方は、負担を軽くするために工夫を凝らしたリンパスリムの使用をご検討ください。
永尾 光一 先生
一般社団法人日本精索静脈瘤協会 理事長
医療法人社団マイクロ会 理事長
銀座リプロ外科 院長
昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。
株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役
三井 桂子
株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役。日本における女性疾患についての認知や理解度の低さに危機感をおぼえ、医療機器開発に着手。子宮脱をはじめとする骨盤臓器脱の治療に用いる「フェミクッション」を開発し、三井メディカルジャパンを通じて発売。
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